「ネズミと蛾が教えてくれたこと 〜家族を守るために、父として今思うこと〜」

あれは今でも鮮明に覚えている。阪神淡路大震災の数日前のことだった。
当時、我が家のリビングで、家族が何気なくテレビを見ていた時のことだ。ふと、テレビの後ろで何かが動いたような気がした。近づいて見ると、テレビの電源コードに、ネズミがつかまっていた。

家族みんな驚いて、「ネズミがいる!」と軽くパニックに。すぐに捕まえようとしたけれど、そのネズミは妙におとなしく、じっとしたまま震えていた。普通なら逃げるはずなのに、ピクリとも動かず、まるで何かに怯えているかのようだった。

簡単に捕まえられたそのネズミは、水の入ったバケツに入れられた。何事もなく終わったように思えた。でも、数日後、あの大地震が起こったのだ。
僕たちが住んでいたのは震源地から離れた他府県だったけれど、それでも震度5強。家の壁がひび割れ、棚が倒れた。幸いにも家族には誰も怪我がなく、それが何よりだった。

地震後、あのネズミのことを思い出して、家族で話した。「もしかして、あのネズミ、地震が来ることを察知していたんじゃないか?」
動物には人間にはない第六感があるというけれど、本当にそうなのかもしれない。
それ以来、僕は動物や昆虫の行動に、少し敏感になった。鳥の飛び方、犬の鳴き方、虫の動き。何かのサインかもしれない、と思ってしまう。

そして今日、久しぶりにあの時の記憶が蘇る出来事があった。
朝、出勤のために家を出た時だった。見慣れない車のリアガラスに、大きな蛾が止まっていた。
「なんでこんなところに?」と思いつつ、自分の車に乗り込んだ。すると、その蛾がひらりと舞い上がり、まるで僕を追いかけるかのように運転席の窓にしがみついてきた。

正直、気味が悪かった。しばらく車を走らせても離れず、ようやくスピードを上げると、蛾は遠くに飛ばされていった。でも、その瞬間、ハッとした。

「あのネズミの時と似てる…」

根拠なんてない。でも、ただの偶然とは思えなかった。何かが起きる前触れかもしれない。そんな気がして、胸の奥がざわついた。

今、僕は父親だ。子供がいて、妻がいる。守らなければならない存在がいる。
だからこそ、ただの気のせいでは済ませられない。常に最悪の事態を想定して、備えておくべきだと強く感じた。

災害は、ある日突然やってくる。
その時に、「あの時準備しておけばよかった」では遅い。非常食、水、懐中電灯、連絡手段、避難ルート――何ひとつ、軽んじてはいけない。

そして、もう一つ思ったことがある。
最近、忙しさにかまけて、なかなかお墓参りに行けていなかった。
でも、こうした不思議な出来事が起こるたびに、「ちゃんと先祖を大切にしないと」と感じる。
昔から「ご先祖さまが守ってくれている」とよく聞くけれど、それは本当にあるのかもしれない。感謝の気持ちを忘れてはいけないと、改めて思う。

僕は、ただの一人の父親かもしれない。
だけど、子供にとっては「世界一のパパ」になりたいと思っている。
だから、どんな小さな変化にも気づけるようにしておきたいし、いざという時に家族を守れる準備をしておきたい。
「何もなければそれでいい」――それが一番だ。でも、心の片隅で「もしかしたら」を考えて動くことが、家族の命を守ることにつながると信じている。

そしてもし、また何か不思議な動物の行動を見かけたら、それを「偶然」で済ませずに、家族に話し、対策を練ることにしよう。
守るべきものがある今だからこそ、敏感でいたい。強くありたい。そして優しくありたい。

あのネズミも、あの蛾も、もしかすると「父親として気づけ」というメッセージだったのかもしれない。

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